優しい爪先立ちのしかた


「栄生ちゃん、今日タルト食べて帰ろー」

にこにこと笑うカナンは栄生の席の前に座った。

「うん、そうしよう」

「ちなみに季節限定キウイタルトでーす」

「キウイって今が旬なの?」

「知らなーい」

一連の会話を聞いていた連中は、えええ、と呆れた表情を見せた。

県立高に通う栄生の友達は宝石や家柄なんて気にしない普通の高校生ばかり。
ケーキと可愛い洋服と勉強に追われる。

そんな普通気取りの自分が好きで、たまに嫌いになる。

とはいえ、家にきた大型犬が居ないこの空間は伸び伸びできる。




カナンの言っていた店は駅の裏側にあった。

「こんな所あるなんて知らなかった」

「あたしも。最近知ったんだよね」