優しい爪先立ちのしかた


しばらく上を見上げていたが、首が痛くなった栄生は梢に目を向けた。梢は視線を感じながらも、作業に集中する。

「ここの傷、どうしたの?」

梢の頬に貼られた大きな絆創膏を差す。

「ちょっと、喧嘩して」

「どうしてうちに来たの?」

話す声のトーンが変わる。手を止めて栄生を見る。もう彼女は梢を見ていなかった。

「私は血縁関係では底辺だから」

理由ではない理由を付け加える。

何が言いたいのか分かる気がして、分からない気もする。

「髪の毛、ゴールデンレトリバーみたい」

「…は?」

「色が。よくその形で本家に居られたのね」

「あっちでは、ずっと裏方だったんで」

少しの雑草を取ったあと、近くに学校があるのか、夕方のチャイムが鳴った。