視線に潰れてしまう。ここで潰れたら、駄目。
何が駄目なのか、何が潰れてしまうのか、自分でもきちんと説明出来る自信は無いが、栄生は自分が初めてその視線に晒された時のことを思い出した。
「あれ、誰だろうね」
不信感を隠せずに、タオルを持ってきた滝埜が梢を見た。
ああ、分かった。
自分を否定されている気持ちになるんだ。
「あれ、私の犬なの」
タオルを受け取って、栄生が答えた。え? と言いたげな滝埜が振り返る。
「梢!」
大声で呼んだ。数人の視線が栄生の方を向いてぎょっとする。
梢は誰より早く、栄生に気付いた。
誰のことも気にせずこちらに近寄り、一番短距離で、躊躇いなく噴水の中に足を踏み入れた。



