優しい爪先立ちのしかた


ぱっと見ると、男子群は栄生より歳も身長もいっていない。大人に見つかるのが駄目だから栄生を呼んだのだろう。それを無下にするのは流石に良心が痛む。

「ごめんねはなちゃん…」

「ううん、やってみるから」

泣きそうな杏奈を見ては断れない。

噴水の中央にすーっと動いていく靴を追うように手を伸ばした。膝を縁にかけたその姿をその場の子供たちが見守る。

こんな時に梢が居れば、と一瞬思う。人差し指が靴に掛かり、このまま引き寄せれば、という所でギリギリの所で留まっていた膝が噴水の中に落ちた。

ばしゃん、と水の中に落ちた栄生に、小さい悲鳴をあげた滝埜。

自分が落ちたことより、その悲鳴に驚いた栄生はきょとんとした顔をしてワンピースが濡れていることに気付いた。