優しい爪先立ちのしかた


「お前、これからも栄生の所でやっていくつもりなのか?」

その質問の意図は何なのか。

嶺が煙草の火を消した。その視線は梢には向かず、ブランドの革靴にいく。

「そのつもりです」

「だったらちゃんとリングに上がれよ。同じもの、見てこい」

その言葉に心が揺れたのは、否めない。

言わんとしていることは分かる。彼女は一人の高校生であり、大家氷室の本妻の娘。

いつまで、自分は彼女に守られていくのだろうか。

「てなわけで、栄生呼んできて」

にこりとその不釣り合いな笑みに、梢は逆らうことはできなかった。










あれ、取れるー?

指さされたのは噴水の中に浮かんだ最近歩けるようになった従姉妹、杏奈の小さい赤い靴。

「こういうのは男子に任せるべきじゃ…?」

「でも一番栄生ちゃんが身長高いから」