少し前を歩く梢の背中を見つめる。栄生は繋がれた手に追いつくように隣に並んだ。

「私、どんな人間だった?」

ざっくりとした質問を投げかけて、梢を考えさせる。聖にもその質問をしたが、鼻で笑われただけで。

『すごい自分勝手なくせに、その勝手がどこまで通用するのか分かってる奴』

少し意味の分からない言葉でまとめられた。

梢の答えを待つ間、海の方をぼんやりと見た。南の方に比べれば汚いものだが、寄せては引く波の音が好きだと思う。

「友達思いで、家族思いで、努力家で、優しくて」

「え、なに、真面目に……」

「でもきっと、いつも不安で、悲しくて、寂しかったんだと思います」

足が止まる。
鳥が鳴いた。