栄生が会場に着くと、もう殆ど始まっていた。
従姉妹たちが姿を見つけるなり、駆け寄ってくる。
「栄生ちゃん、来ないと思ってた! 久しぶり」
年下が多い中で栄生と同じ学年の滝埜が栄生の腕にしがみついた。相も変わらず元気な子。
今の代の氷室の分家は、女の方が多い。男は片手で数える程しかいなく、本家もまた然り。
来ないと思っていた、と言われる原因が姿を現した。栄生の両親である、二人。
本家の現当主と、その本妻。
騒がしかったその場が一瞬静まり、その様子を窺う。最初に拍手を送ったのは、滝埜の父親だった。
「呉葉さん、お誕生日おめでとうございます」
その言葉に微笑む栄生の母親。
会場に居る者全てに飲み物が行き渡り、乾杯という声が響いた。



