優しい爪先立ちのしかた





一方、梢は車のドアに寄りかかりながら煙草を咥えて、火を点けるかどうか迷っていた。

ライターを持ったまでは良いが、煙草を吸うことを躊躇している。

あれが、尾形。

黒い髪は梢とは反対だったが、今やそれも同じような色に落ち着いてきている。栄生と親しく話しているが、敬語は崩していない。だとしても、尾形は男だ。

煙草を戻した。考えがまとまらずモヤモヤして額を手で覆う。

あの男と寝た、とか。

昨日の栄生の告白を断ってしまった手前、何も言えないのは分かっているが、カナンの言葉が奥に留まっている。

「…血溜まり」

思えば最初に栄生に会った頃、そちらの方が気になっていた。
それに先ほど、入院とか…。

「遅くなってごめん」