優しい爪先立ちのしかた





午前九時ぴったりに襖を開けた梢は、丸くなって眠る栄生を起こした。

「今から準備しないと間に合いませんよ」

その言葉にむくりと起きた栄生は眠そうに膝に額をつけた。これは朝飯を口に突っ込むべきだろうか。

「栄生さん、着替えてください」

「はいはいはい」

「返事は一回ですよ」

「はーい」

欠伸を噛み殺しながら返事をした栄生がようやく立ち上がった。


栄生の分が残された朝食は朝粥と味噌汁と野菜。むぐむぐと口に詰め込む後ろで、梢が髪の毛をセットしていた。

綺麗なお団子が出来上がり、同時に栄生が「ごちそうさま」と言う。

「…今日気合い入ってる?」

「そんなこと、ないと思いますけど」

「…出席したかった?」

こちらを見ないのは故意なのか。いつもの要領で皿を重ねた栄生。