優しい爪先立ちのしかた


仕方がない、と荷物を車に置いてこようと思い、二人分の少ない荷物を持ち上げる。

「梢、お前もう帰んの?」

後ろから声を掛けられた。振り向けば昨日散々梢の肩を叩いてきた同期。

「元気でいろよな」

そしてまた肩を叩かれる。

「ああ…お前は二日酔いとかで寝込んでれば良いのに」

「あんくらいで二日酔いはねえな」

「だろうよ」

昔から同期の酒豪ぶりは耳にしていた。

荷物を持ったまま、雑談を少ししていた。それから、同期の方が先に頭を下げた。

「おはようございます」

その姿を見て、梢も頭を下げる。爽やかな笑い声と共に「おはようございます」と返ってきた。

「お話中、ごめんなさいね。壱ヶ谷くん、少しお借りしても?」