「本当だった!」

ふふ、と嬉しそうに梢に抱きつく栄生。

「はい? やっぱりどこか打ちましたか?」

「打ってない、梢の鼻ってすごい」

本当にゴールデンレトリバーみたい。

そう付け加える当人がまず、梢を犬のように扱っているのだが。

いくら栄生が軽いとしても、この段差から落ちてきた女をあんなに軽々とキャッチするのはあの体型の女性には難しい。

まさかそれを狙って落ちたんじゃ…と梢は頭を過ぎったことに眉を顰める。

「栄生さん、どこも痛くないですか?」

「大丈夫。星屋が男で助かった」

「すいません、呼んだのは不注意でした」

地面に足を付けた栄生は元気のなさそうに言った梢の頭を上機嫌に撫でた。