優しい爪先立ちのしかた


栄生の屋敷の庭は梢が来てから随分と賑やかになった。その日に見える花が沢山咲き誇っている。

「…あ、もしかして梢って本家で庭師だったの?」

パズルのピースがはまった栄生の頭の中。急に顔を上げた栄生に、梢が驚くようにそちらを見る。

「はい、そうです。…言いませんでしたか」

「聞いたことない。知ってるの、梢の名前と不良だったのくらい」

「俺も栄生さんのこと、それくらいしか知りませんよ」

言われた言葉に、きょとんとした顔をする。

確かに、思えば、言われてみれば、そうかもしれない。

立ち上がって、先程まで拗ねていたのなんて忘れたかのように栄生は口を開く。

「梢って、よくうちに来ようって思ったよね」

そして、くすくすと笑った。