優しい爪先立ちのしかた


部屋に荷物を置く梢の背中を睨みつける。

「…私、阿婆擦れじゃない」

「ああ、気にしてたんですか。それを聖さんが知っていて、本家に知らないことに俺は驚きましたけど」

「あんなこと言ってるの聖だけだもの」

「そんな拗ねなくても」

栄生の顔を覗き込んで笑う梢。

それによって栄花は更に唇を尖らせた。

わざとらしく大きくため息を吐いて、縁側の外へ足を放り出す。

「栄生さん、」

「座椅子は結構」

「阿婆擦れだなんて思ってませんけど、事実は曲げられませんから」

梢は隣に座る。

それを見上げようと思ったが、そんなことしたら負けだ。曲げた膝の上に頭を乗せて、目を瞑る。

蝉の声を聞きながら、手入れのされている庭を見ている梢。