優しい爪先立ちのしかた


眉を顰めて、梢の姿を捉える聖。その胸元にはマリア様のネックレス。

口調は男のようだが、聖は女だと梢は感じた。

「ああ、お前が」

「初めまして、梢といいます」

「我が儘女のお付きはどうだよ? で、この阿婆擦れとはもう寝たのか?」

ニヒルな笑いを見せた聖に、栄生はすごい形相で振り返った。

ニヒルには負けないような般若。

梢は苦笑いして、その背中を押す。

「部屋はどちらですか?」

「突き当った左の奥」

「ありがとうございます。では、失礼します」

会釈程度に頭を下げて、栄生の背中を押して行った。

ちょっと、と肩越しに栄生が聖の姿を見ようとしたが、その頃にはもう突き当りを曲がっていた。