優しい爪先立ちのしかた


季節限定キウイタルトを頼んで、紅茶を飲んでいると携帯が鳴った。栄生は怪訝な顔をして、見慣れない番号を見つめる。

「知らない人?」

カナンの問いに首を傾げて、椅子を立ちながらボタンを押した。

「もしもし」

「もしもし、栄生さん、どこに居るんですか」

少し心配そうな声が耳に響く。聞き慣れた、梢の声だった。

「あー、友達とタルト食べて帰ろうとしてた」

「タルト」

「うん、ごめん。早めに帰る」

何故謝ったんだ自分。

謝罪が口から出たことに驚いて、溜め息を吐きたい気持ちで一杯になる。携帯を閉じてカナンの元に戻った。

「誰からだったー?」

フォークを咥えながら聞かれる。