私は静かに息をのんだ。

彼の言葉が私をストレートに直撃する。

なんの言葉も出なかった。

口を半開きにしたまま声を失っている間に、彼はまた去っていく。

あの真っ黒な影を引き連れて、廊下に足音を響かせながら、遠ざかっていく。

私は震えていた右手をおろすと、左手で右手を力強く包みこんだ。

いつのまにか廊下の色は、焼けた空の色に近くなり、眩しいオレンジになっていた。

グラウンド周りに植えられている大きな木々たちは、日暮れで色濃く見え、強い風にあおられている。

まるで大きな怪物がうごめいてるみたいで、なんだか胸騒ぎがした。

なんなんだろう、アイツは……?

偉そうに、なに言ってんのよ……。

私には私の生き方があるんだから、あんなヤツに言われる筋合いはない。

教室に入った私は手早く荷物をまとめた。

そして、窓から見える燃えさかる太陽を、私は思いきり見返した。