Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

人通り情報を集めたところで、ジルは次にどこへ行こうかと悩んでいた。

一旦シェリーの店へ戻ってみるか、それとも彼が現れるかもしれないというバーへ足を運んでみるか、はたまた彼の家だと思われる一軒家に赴いてみるか。


結論はすぐに出た。

今は一分一秒でも惜しい状態だ。

シェリーのところへ戻っている暇はない。

また、行きつけのバーにも今日現れるとは限らない。

いつ会えるかどうか分からない場所で待つような賭けには出られない。

街外れにあるという一軒家に行ってみるしかない。


どのくらい時間がかかるか分からない。

夜分に訪れるのは少々非常識だとは思うが、顔を合わせられれば話はできるだろう。

そう思ってジルはメモをリュックの脇にあるポケットへ押し込んだ。


「やめてください！」

ジルが荷物を持って立とうとしたとき、広場の片隅で女性の悲鳴のような声が聞こえた。

ここからでは見えない。
噴水を挟んで反対側から聞こえた気がする。

気のせいだろうか。


ジルは訝しく思いながら、噴水を迂回して声の主を探した。