辺りは陽も落ちてからかなりの時間が経過していた。
メインストリートから続く街の広場には、円形の大きな噴水が佇んでおり、真ん中の石で出来たオブジェから噴き出した水が、穏やかに滑って流れていく。
ちょろちょろと静かな水音を発していた。
昼間ではもっと水飛沫が上がっているのだが、今は夜のためか水量が調節されているらしい。
溜まった家の中に照明装置が設置されていて、優しい光でライトアップされている。
下から照らされた水面がユラユラとリズムを刻むかのように揺れていた。
ジルはその噴水を囲むように備えられた石のベンチに腰を掛けていた。
アイザックの家を出てから、紹介された人物を虱潰しに当たった。
気が付けばもうこんな時間だ。
噴水の横には大きな鐘の付いた時計が設置されている。
噴水と鐘時計はこの石畳で出来た広場のシンボルのようだ。
その鐘時計の針は午後九時を過ぎたところを指していた。
広場は街灯で照らされ、近くのレストランや酒場などはまだ営業中だ。
この時間、真っ暗になるリィズ村とは違い、街には灯りが燈っている。
さすがに昼間ほどとまではいかないが、人通りもそこそこある方だった。

