Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


「え? その方って…」

唐突に会話に入り込んできた女性がいた。

客にお茶を運んできたその女性はアイザックの孫娘らしい。

「うちの店に来ているお客様かもしれない」彼女はそう言った。

「お客さん?」

「えぇ。私、友達の経営しているバーでアルバイトをしているんです。
そこに来るお客様にロイさんて方がいて。特徴も似ている感じがしますけど」

そう言って彼女は思い出すような仕種をした。

「どこに住んでるとか分かりませんか?」

「いえ、それはちょっと…。
私も会話をしたのは本の数回ですし、店には頻繁に来る方ではないので。
ですけど、うちの常連のお客様とも何度か顔を合わされてるんで、そちらに訊けば何か分かるかもしれません。
でも、お探しの方かどうかは……」

ジルの探している人物かどうかは自信がないということらしい。

ジルはそれでも構わないと言った。
違っていれば他を当たるまでだ。


ジルはその店の常連客の名前と住所を教えてもらい、アイザックの自宅を後にした。