Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


引き続き自分の作業に移ろうとする主人の姿を見て、ジルは短い溜め息をついた。

この主人からは情報を得られそうにない。


街の中からあの青いバンダナの青年を探すしかないのだろうか。

この街は広い。

森の中から一本の気を探し当てるようなものだ。

そんな悠長にしている時間などないというのに。

それでもやってみるしかない。


諦めて踵を返そうとした時、ジルは自分の持ち物を思い出した。

布に包まれた柄を取り出し、刻まれた文字が見えるように主人の前に突き出した。

「あの、これに見覚えはありませんか?」

バンダナの男の事は教えてくれなくても、ブラッド・スネークについては何か知っているかもしれない。
そう思った。


唐突に目前に突き出された代物に主人は目を瞠った。

そしてそこに刻まれた文字と、ジルの顔を代わる代わる見る。

「これは…」と呟くように声を漏らした。

「友人が襲われたときに、相手が落としていったものなの。
ブラッド・スネークについては何か知ってませんか?
それに、あの男の人が同じ紋章のついた首飾りをしていた気がしたんです」