しかし、客に対してなんとも冷たい言い方だ。
ジルは少しムッとしたが、ここで問題を起こしても仕方がない。
言いかけた言葉を飲み込むと、本題の彼のことを尋ねた。
「今、出て行った男の人なんですけど」
そう切り出すと、主人は眉を寄せてジルを見た。
「あの、青いバンダナの男の人です。
今さっきここへ来たと思うんですけど」
「あぁ。ついさっき帰ったがね」
「その人のこと、教えてもらえませんか?」
ジルがそう言うと、主人は作業の手を止めてもう一度ジルを見た。
椅子から腰を浮かせ、訝しげな表情を浮かべて、今度は上から下までジルを舐めるように注視する。
怪しい人物だと思われているようだ。
身なりからしてジルはよそ者だと容易に想像できる。
そんな人物がいきなりやってきて、客のことを尋ねた。
警戒するのは当然かもしれない。
「あの…、怪しいものじゃないんです」
ジルは主人の視線に居心地の悪さを感じながら、なんとか警戒を解いてもらえないかと考えた。
ただ、説明することしか答えは思い浮かばなかったのだが。

