ふと、男が出てきた店舗の方へ目をやった。
彼はどこへ立ち寄っていたのだろう?
店の人なら彼を知っているだろうか?
細い小道の中で小さく佇むその店舗は、アンティーク調に飾られ、どこか古めかしい。
アンティークと言えば聞こえはいいが、決してお洒落な感じではなかった。
掃除も行き届いておらず、扉が壁が薄汚れている。
長年雨風に晒されているのだろう。
唯一あった窓から中を覗き込んでみる。
中は薄暗く、大きなテーブルやタンス、ランプや本などが整理もままならぬ状態で置かれている。
どうやら古物商のようだ。
ジルはとりあえず入ってみることにした。
古ぼけた木の扉を押し開けると、ギィィと錆びた蝶番が音を鳴らす。
扉に付けられた呼び鈴もカラカラと乾いた音を奏でた。
小道の奥にあることと、小さな窓が一つだけのせいで、太陽の光は殆ど入ってこない。
照明がなければ昼間でも真っ暗だろう。
しかし、その照明も薄暗い。
室内にある商品だと思われるものが、朧げな灯りにぼぅっと照らされている。
おまけに埃っぽい。
薄汚れた戸棚に、陶器のピエロの置物、年代物の武器や鎧。
大きな古時計もあったが、メンテナンスがされていないのか、針は時を刻んでいないようだ。

