Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


まったく、無駄に時間を浪費してしまった。

あんな連中に捕まらなければ、今頃はバンダナの男に追いついていただろうに。


そう思えるほど、横道は人通りが少なかった。

疎らに並ぶ石垣の小道がずっと奥まで続き、なだらかにカーブを描いている。

ジルは小走りにその道を進んだ。


しばらく行くと、十数メートル先にある店舗の扉が開いた。

そして、一人の人影がその店から出てくる。

かなり遠目だが間違いない。
さっきぶつかった青いバンダナの男だ。


男は店の人間と言葉を交わすと、背を向けて歩き去っていく。


待って。

ジルは心の中で叫ぶと、男に向かって駆けた。

石垣の足場がデコボコしていて走りにくい。


男は小道を抜けると、また角を曲がってしまった。

ジルも小道の出口に辿り着いた。

そこはメインストリートとはまた違った大通りだった。

やはり、人通りは多い。


どっちへ行ってしまったんだろう。
弾む息を落ち着かせ見渡した。

右を向いても、左を向いても、青いバンダナの頭は見当たらない。

男はこの雑踏の中へ消えてしまい、今度こそ本当に見失ってしまった。


焦燥感が募る。

見つけた獲物をみすみす逃してしまった。
そんな気分だ。