街中でにわかに起こった戦闘は、行き行く人々を足止めするのに充分だった。
男二人の相手がジルのような小柄な女だったからだろうか。
所々に人垣が出来始めている。
あまり騒ぎを大きくするのは好ましくない。
ジルはキュッと唇を結ぶと、ダガーの先の男に言った。
「急いでるって言ってるの。
私に構わないで」
大きな瞳で睨みを利かせながら凄むと、男は目の前のヌメリと光るダガーに大粒の汗を額に浮き上がらせて、コクコクと頷いた。
その姿を確認すると、ジルはダガーの先端を男の喉元から外し、関節を極めた男も解放してやる。
男たちは悔しそうな目でジルを睨んでいたが、敵わないと悟ったのだろう。
悪態をつきながらその場から去っていった。
集まり始めた人垣から、パチパチとまばらな拍手が飛ぶ。
思いのほか目立ってしまったようだ。
なんだか気恥ずかしい。
ジルはダガーを革ベルトに差し込むと、バンダナの男の行方を追って、横道に入った。

