そこには、こんな朝から赤ら顔をした、いかにも性質の悪そうな男が二人、ニヤニヤと笑みを顔に貼りつかせながら、こちらを見据えていた。
「なぁ。俺たちとちょっと付き合わねぇ?」
馴れ馴れしげに言いながら近寄ってくる。
嫌な連中に目をつけられたものだ。
こんな連中は相手にしないに限る。
「急いでますので」
そうあしらって、先を急ごうとしたが、
「そんな、つれない事言わねぇでさ」
片一方の男が、過ぎ去ろうとするジルの腕を強引に掴んだ。
その力は強く、爪が腕に食い込みそうなくらいだ。
「ちょっ……」
振りほどこうとしたが、意外にも腕はガッチリと掴まれてしまってほどけない。
「付き合ってくれるまで、放さねぇぜ」
男はニヤリと下品を笑いながら、その酒臭い顔をジルに近づけた。
この男、ちゃんと歯を磨いているのだろうかと疑いたくなるような不快な口臭が鼻をつく。
ジルはその悪臭に思わず顔を顰めた。

