まさかと思い振り返ったが、男はよほど歩くのが早いのだろう。
もうかなりの先に青いバンダナの頭が遠ざかっていくのが見える。
行き来する人の間をすり抜けるように歩いていく。
ちょっと、待って。
ジルは躊躇もせずにその男を追った。
考えるよりも前に行動に出ていた。
あの男に訊けば何か分かるかもしれない。
そんな直感がした。
人の往来が多い。
ジルは思うように先に進めないことに歯痒さを感じながら、先を行く青いバンダナを見失わないように歩を強めた。
何度も人とぶつかりそうになるのを、注意しながら来た道を戻る。
なかなか追いつけない。
なんて歩くのが早いんだろう。
そんなジルを嘲笑うかのように、青いバンダナはスイスイと人の間を通り抜けていく。
不意に青いバンダナがふっと消えた。
見失ってしまったのだろうか。
いや、横道に入ったらしい。
姿が消えたところまでジルは慌てて駆け寄った。
その時である。
「よう、お嬢ちゃん。一人なの?」
後ろから声を掛けられ、ジルは振り返った。

