Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


ザックもその代物が気になったようだ。

痛いところを突かれた子供のようだった態度はどこへやら、テーブルに置かれたそのものをジルの肩越しから覗き込んだ。

「ヤツらが持っていたものだから、これでヤツらを特定することができないかと思って…。
見たことないかしら?」

ジルは言って、交互に二人に目をやった。

店主は分からないといった面持ちで首を横に振る。


「これは…、まさか……」

ザックが息を呑み、ゆっくりと柄に手を伸ばした。

柄に触れる指が小刻みに震えている。

「見たことあるのね?」

ジルは身を乗り出してザックに迫った。

「あぁ…。だけど…、そんな、まさか…」

ザックは目線を柄から外さずに言葉を絞り出す。

俄かに信じられないといった感情が彼から滲み出ていた。

「どういう連中なの?」

じれったい気持ちをできるだけ抑え、彼に言葉を促す。

ザックは、手にした柄を静かに元の位置に戻すと、「これは…」と口を開いた。

「これは、伝説の盗賊団<ブラッドスネーク>の家紋だよ」