しかし、店主はおとなしそうな印象とは裏腹に、キッとザックを見据えた。
「彼女は自分のことをすべて話してくれたのよ。こっちだって話すべきだわ。
それに、犯人に繋がることを思い出すかもしれないじゃない」
「思い出すわけないだろ。僕はその場にいなかったんだ。
それに、妹が攫われて一週間以上が経ってる。
…もう、手遅れなんだよ」
ザックは一気にまくしたてると、こちらに背を向けて座り直した。
苛立ってるのは分かるが、手遅れとは…。
諦めているのだろうか。
「なによ、手遅れって。
彼女は諦めてなんかいないじゃない」
ザックの態度に腹立たしさを感じたのか、彼女はザックに向かって言葉を浴びせ始めた。
ザックの言い分を待たずに続ける。
「彼女は一生懸命に友達を思ってるわ。私もなにか協力したい。
だけどザック、あなたは何?
毎晩毎晩ここへ来てはお酒ばかり飲んで。
悲しい気持ちは分かるけど、結局は自分を癒したいだけじゃない。
悲劇の主人公でも気取っているの?
みんなに同情されたいだけ?
妹さんを助けるために、あなたは何をしたっていうのよ?」
一気に発したためか、彼女の呼吸は荒くなっていた。
しかし、瞳は強い思いでザックを見つめている。
数日間、彼の酒の飲み方を見ていて、もうこんなザックの情けない姿は見たくない。
そんな思いが込められているかのようだ。

