ジルの呼び声に足を止めた彼に近づく。
「何があったんですか?」
「君には関係ない」
視線を合わさず、彼は冷たく言い放った。
そして、ジルの脇を擦り抜け、再び戸口へと向かう。
「待って!」
ジルは食い下がった。
彼の行く手を遮り、強い視線で彼を見上げた。
同じ目に遭っているなら、気持ちは同じかもしれない。
何よりミシェルを救うために、襲った連中のことが少しでも分かるなら。
どんな些細なことでも構わない。
しばらく無言で二人は向かい合った。
「…盗賊に、襲われたんですね」
沈黙の後、ジルは静かに彼に問うた。
彼は目を伏せて何も言わなかったが、その態度こそが図星だと認めている。
ジルは彼をカウンター席へ戻るように促した。

