話すきっかけを彼女に作ってもらったことに感謝しながら、ジルは口を開いた。
「えっと…、話せばいろいろあるんだけどね。
昨日、トラブルが起こって…。
今は探し物をしていて、さっきこの街に着いたとこなの」
思いつく言葉を並べ、語り出す。
「探し物ですか?」
「えっと、この街でもなんか噂が立ってるとか聞いて、何かヒントがあればって思って…」
ジルはミシェルの事件をあからさまに話していいか迷っていた。
盗賊に人攫い。
一般人が聞いて怯えないはずがない。
しかし、ある程度話さない限り、情報が集められない気もしていた。
「噂って、どんな噂です?
この街は広いですからね」
彼女は少し興味を持ったようだった。
カウンターに身を寄せて、気持ちジルに近づく。
「例えば…、この街の外は危ない。とか」
「やだ。街の外は危ないに決まってるじゃないですか」
上目遣いに彼女の様子を探りながら訊いてみたのだが、当たり前のように返されてしまった。

