「他に人が攫われたことは?!
あいつらの正体は分かってるのか?」
詰め寄ってみたが、おじさんは残念なことに首を横に振った。
「その噂は、どこで聞いたの?」
今まで黙っていたジルが少し離れた場所から問いかけた。
ジルはダレンや御者の方向を見ずに、地面にしゃがみ込みながら、そこにある何かを見つめている。
「あ…、街です。
これから行くはずだったグランドヒールの酒場で…」
ジルは、「そう」とだけ返事をし、そっと何かを拾い上げた。
襲ってきた盗賊が武器に使っていた湾曲刀だ。
ジルは湾曲刀を手に取り、柄の部分を念入りに調べている。
「どうした?」
ダレンが寄ると、ジルは湾曲刀をダレンに見えるように持ち替えて言った。
「私を足止めしていた男が落としていったみたい。
ねぇ、この柄の部分だけど…。これ、何かのマークみたいじゃない?
その盗賊たちを特定するヒントになるかも」
ジルの指差すところには、歪(いびつ)な形をした【B】の文字に、細い蛇が絡みついている。
なんとも不気味な感じだ。
蛇はぐにゃりと曲がりながら【B】に絡み、見ようによっては【S】の文字にも見えなくない。

