「…あのぅ。もう一人のお嬢さんは、どうなさった?」
背後からおじさんに問われ、いっそう無念さを感じる。
しばらく無言で肩を落としているジルとダレンを眺め、おじさんは残念そうに深い溜め息をついた。
「まさか、僕たちが襲われるなんて…」
長い沈黙の後、若者が独り言のように漏らした。
声はまだ震えているようだ。
「何か知ってんのか?」
若者の言葉に反応し、ダレンは早口に問う。
だが、若者はビクビクしながらダレンを見遣った。
悪いことをしていないのに、まるで自分が叱られるような、そんな瞳で覗ってくる。
「いや、あの…その……」
口ごもる彼に、半ばイライラしながらダレンは短く溜め息を漏らした。
「アイツらに心当たりがあるのか?」
「あ、…最近、街で噂になって…」
しどろもどろに若者は答えた。
その後を続けるようにおじさんの方が口を開く。
「盗賊です。
いつ頃からか、道中に盗賊に襲われたって者たちが増えてるって話なんです」
「盗賊?」
ダレンが訊き返す。
妙な胸騒ぎがする。
行き来する旅人や馬車を見境なく狙って金品を奪うヤツら…。
財宝や秘宝などにも目がない。
いや、どちらかというとトレジャーハンター的な者たちという解釈が高かったが、それだけでは食うことができなくなってきているのか。
人を襲うことになったのはその為だ…。
金品だけでは飽き足らず、人を攫うという目的は…。
嫌な考えが頭を過ぎり、ダレンの背中に寒気が走った。

