Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


その勢いに圧倒される中、ローグを制したのはリジーだった。

ダレンとローグの間に割り込み、「落ち着け」とローグに向かって一蹴する。

リジーに一喝され、ローグは口を噤んだ。

同時に恥ずかしさを覚えた。

リジーの妹のミシェルがどこの誰かも分からない奴に攫われたのだ。

自分がジルを心配するより以上に、彼は妹のことを思って止まないはずだ。

しかも、ミシェルはジルのような冒険者ではない。

今頃、どんな恐ろしい目に遭っていることか…。


「…悪い」

素直に謝罪の言葉が出た。

そんなローグにリジーは無言で頷いた。


「それでよ、これからどうする?」

ローグが少し落ち着いたのを見計らって、スコットが神妙な顔で投げかけた。

どうするも、こうするも…。

「助けねぇと」

ローグはテーブルの上で拳を握り。ぐっと力を込めて言った。

ミシェルが攫われたんだぞ。

ジルにだって一人で追わせる訳にはいかない。

手助けが必要なはずだ。

いや、必要ないと言われたって、後を追ってやる。

「いったい、どこにいるかも分からないんだぞ。
それに何者かも」

そんなスコットの弱気な発言に、内心苛立ちを覚える。

何でこんなにスコットはマイナス思考になってんだ?

ローグは舌打ちをしながら言い返した。

「ジルが何かを掴んでるかもしれねぇ。
なぁ、ダレン。あいつはどこに行ったんだ?」