営業時間外のぽんぽん亭は、いつもの活気が嘘のように閑散としていた。

電気をつけていないせいで、窓際以外は薄暗く、テーブルに掛かったチェックのクロスがどこか物寂しげだ。

いや、この重苦しい空気がそうさせていたのかもしれない。

ダグラスはカウンター席の近くのテーブルに皆を誘導して、その辺りだけ灯りをつけた。


ローグはダレンの真向かいに当たる席に腰掛けて、誰かが話し出すのを待った。

その間にも疑問の感情が頭を巡る。


俺がいない間に何があったんだ?

ジルは無事なのか?

いや、あいつは柔なヤツじゃないのは分かっている。

村に何かあったとしても、あいつなら何とかするだろう。


「…ミシェルが……」

沈黙を破るようにダレンが静かに口を開いた。

無意識に俯いていた顔をダレンの方へ向ける。

「ミシェルが、攫われたんだ…」

ダレンは先ほどより少し大きめの声で言い、悲痛に顔を歪めた。

両手で頭を抱え込む。


なんだって?
ミシェル…?

ダレンの言葉を聞いたとき、ローグは自分の耳を疑った。

心の何処かで、ジルのことを聞かされるばかりだと思っていた。

しかし、ダレンはローグの予想とはまったく異なる悲劇を口にしたのだ。