「ジルはどこか別の場所に?」

ジルの名前を出した途端、ダレンがハッとしたのをローグは見過ごさなかった。

ジルがどうかしたのか?

ダレンは唇を噛み、ローグからやや目線を外した。

「ジルに何かあったのか?」

ダレンや皆のこの態度に、ローグは何か嫌な予感がした。

騒ついた感情が湧き上がり、不安となって駆け巡る。

ローグは強い口調でダレンに詰め寄り、彼の両肩を掴みかかった。


ダレンは相当疲れているようだ。

顔や身体は泥で薄汚れ、手足には傷も無数にある。

掴まれたところに痛みが走ったのか、ダレンは顔を歪めた。

力を込め過ぎたようだ。

ローグはそっとダレンの肩から手を離した。


ここじゃ、なんだから…。

スコットが辺りを気にしながら、そっとぽんぽん亭の主人のダグラスを促した。

ダグラスはスコットの意を察して、店内への入口を開ける。

中に入って話そう。
そう言っているのだ。