冗談でしょ…。

外の情景に、ジルは密かに息を呑んだ。


扉を開けるとそこには三人の男が馬車を囲んでいた。

顔をバンダナや布で覆い、表情さえも分からない。

視界を維持する為、眼の部分だけが開いている。

手には武器。

刃が大きく曲がった湾曲刀を握っている。


馬車の扉が開いたことに、連中は一瞬怯んだかに見えた。

が、ジルの姿を見とめると、男たちは鋭い眼光でジルを射抜いた。

思うが早く、ジルを取り押さえようと一人が飛びかかる。

ジルも考える間もなく身体が動いていた。

奇襲を避けるべく、扉の木枠を掴み、逆上がりの要領で身体を素早く持ち上げる。

直後に頭の下で湾曲刀が空気をビュンと切り裂いた。


馬車の屋根にうつ伏せで到達すると、素早く体勢を変えて、座ったまま真下の男を蹴り飛ばす。

男はよろけながら後退し、蹴られた肩を庇いながら鋭い眼でジルを見上げた。

今の攻撃のダメージは殆どないらしい。