Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

兄のロイが盗賊団を抜けてから、数ヶ月が経っても、ニックは呆然と暮らしていた。

手助けしたかった兄、護りたかった妹。

両方を無くし、ただ何もしたくない毎日。

その間の盗賊団はもはや壊滅寸前で、メンバーたちも多くがこの地を離れていってしまった。

ただ、ジャンとほか数人たちが残ってニックを支えてくれていた。


だが、この状態ではなんの解決にもならない。

せめてニックには盗賊団をまとめるくらいにはなってほしいと、ジャンは一つ提案をした。

近くでもいい、しばらくここを離れて他の地を巡ってみようと。

また冒険に魅せられて、前を向いて歩けるかもしれない。
辛い状況を乗り越えられるかもしれない。

ほんの旅行気分でもいい。
そう思ってのことだった。


そのとき既にニックの身体は、カレンと同じ病魔にジワリジワリと蝕まれ始めていたのだが、そんな事は分かるはずもなかった。