Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

だが、ニックはどこかで分かっていた。

カレンの病気が治らないことに。

そして、病は確実に彼女を蝕み、死期が近いことに。

あのとき回復をしていても、命の炎はもう消えかけていたのだ。


ロイがわざと毒草を採ってきたとも思ってはいなかった。

それどころか、山奥へ命の危険も顧みず出かけてくれたのだ。

街へ行く方が簡単な道のりだった。


それもすべて分かっていた。

分かってはいたが、ニックは妹の死をロイの責任だと罵った。

いや、そうしなければ、そう思わなければ、自分が生きていけなかったのかもしれない。

誰かを恨むことで、誰かに責任を擦りつけることでしか妹の死を受け入れられなかったのだ。

皮肉なことだと今更思う。

誰かを恨むことで、憎むことで、生きる活力が得られるなんて。

妹カレンはそんな人間にはなれなかっただろうに。