ニックは最初に、自分の妹へ対する思いから話し始めた。
自分が七歳の頃に生まれ、すぐに両親は他界。
兄のロイも祖父から厳しい修行を強いられていた。
妹の面倒は自分が見る。
この厳しい世界の中、妹に不自由はさせたくない。
盗賊団を背負う兄の重荷にもならないよう自分が妹の見なくては、と心に決めた子供の頃。
ニックは妹カレンの成長が楽しみで仕方がなかった。
自分のナイフの扱いや、気配の殺し方など、盗賊としての技術を磨かなければならない。
そんな辛い修行の後でも、カレンの笑顔を見ると疲れが取れる気がした。
次第にカレンは赤ん坊から女の子へ、そして少女へと成長していく。
いつも泣きべそを掻きながら後ろをついてきた女の子は、疲れたときにそっとハーブティーを出して癒してくれる、優しい気遣いのできる少女へと変貌を遂げていった。
優しい妹。
かわいい妹。
ニックのそのカレンへの愛情は異常とも呼べるものだったのかもしれない。
そんな中でニックはカレンから意外なことを聞かされた。
恋人ができたと言う。
相手はニックの親友のジャンだった。
少し嫉妬心が湧いた。
だが、嬉しそうにジャンのことを語るカレンの姿を見ていると、応援したくなった。
もちろんジャンには、妹を傷つけるなと釘を刺すことは忘れてはいなかったのだが。
そんな事をしなくてもジャンには信頼を寄せていた。

