Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

そっちに行かせるかっ!

ローグがジャンの背中に身体を向けた刹那、バタンと部屋の扉が開いた。

木製框組の重厚感ある扉が開き、そこに幾人かの人影が見える。

新たな援軍に違いない。

ジルが負傷している今、自分ひとりで相手にできる人数じゃない。


くそったれっ。

ローグは思い切り悪態をつくと、ジャンを追うのをやめ、その扉目掛けて跳躍した。

人の身の丈二倍ほどまで飛び上がり、そこから気を込めたロングソードを横に払う。

その払いによって生まれた風圧が、入り口目の前の石畳に弧を描きながらピキピキと亀裂を入れていく。

風圧によって盗賊たちは怯んだかに見えた。

すかさずそこへローグは指先に点けた小さな火の玉を投じた。

炎の玉は亀裂の端に達すると、まるで蛇が這うかのように亀裂に沿って走る。

一呼吸の後、それらは亀裂から炎の壁となって燃え上がった。

扉正面に現れた炎の壁は、盗賊たちの侵入を阻む時間稼ぎくらいにはなりそうだ。


片膝をつきながら着地して、ローグは大きく肩で息をついた。

熱風が体を覆うのが分かる。

そこでローグはニックたちの方を振り返った。