Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

な…。馬鹿な。

ニックは自分の見たものに驚きを隠せなかった。

カレン…?

彼女の涙が脳裏に焼きつく。


だが、勢いをつけたニックの足は止まらなかった。

ブレーキがかからず、そのまま少女を擦り抜けると、幻影は飛び散るように弾け、霧散した。


目前に標的のロイが迫るが、ニックの焦点は定まっていなかった。

湾曲刀を握る手から力が抜けかかる。

「うわぁぁぁぁーーー」

ニックは叫びながら刀を突き出し、体重をかけるようにして倒れこむと、ロイと衝突した。


カレン…。

お前は僕が間違っていると…。
僕を止めようとしたのか…。