Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


ニックは床に突っ伏したまま、胸を襲う痛みに必死で耐えながら悶えていた。

ジルに投げ飛ばされたときに打ちつけた痛みではない。

体の内側から肺をぐっと握り潰されるかのような激痛に、呼吸も荒くなる。

こんな時に、症状が出るとは…。
こんな時に…。


ニックは病に侵されていた。

それは皮肉にもカレンと同じ病だ。

いつ頃からだったか、病は確実に自分の体を蝕んでいった。

それを知っているのは、信頼度の高いジャンしかいない。


普段より興奮したせいだろうか。

怒りに任せてロイを殴り、激しく動いたせいだろうか。

痛みの波が押し寄せ、落ち着いて酸素を体内に取り入れることもままならない。


ジャンは自分に攻撃の手が向かないように、相手を阻んでいてくれている。

何度か部屋内に爆音が響いた。

それを聞きながら、何とか痛みが引いてくれるまで耐えて待つ。