Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~


「おい。大丈夫か」

ロイは目の前で倒れたジルに駆け寄っていた。

とはいえ、自分自身もニックに滅多打ちにされ思うように足が動かない。
フラフラの状態だった。

うずくまるジルを抱え起こし、傷の状態に目を走らせる。

ナイフは彼女の左太股を捉え、深々と突き刺さっていた。

その根元から真っ赤な血が染み出てきて、衣服を赤く染めていく。

ぬっとりとした生暖かい血が、ロイの手にも貼りついた。

ジャンの奴、なんて酷いことをしやがるんだ。


傷を確認しようと衣服を裂いたとき、ジルが声にならない悲鳴を発した。

身体が小刻みに震えている。
額にも大粒の脂汗がふつふつと浮いていた。

相当な痛みに違いない。


悪いがもう少し我慢してくれ。

ロイは心の中で呟くと、自分の衣服を切り裂き、あて布を作ってジルの傷口に当てた。

ナイフの刺さり具合と出血の状態から見て、動脈は傷ついていないようだ。

そう判断するとロイは一気にナイフをジルの太股から引き抜いた。

またしてもジルの悲鳴が響く。

溢れ出す血を布でしっかりと押さえ、それを固定するのにバンダナを巻きつけた。

見る見るうちにバンダナにも血が滲んでいく。