Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

獲った。

そう思った。

だがジャンはその時とても信じられない行動に出た。


一発目の玉をギリギリまで引き寄せてから、上半身を反らせて避ける。

そこへタイミングをずらした二発目が襲いかかる。

絶対に避けられない。

そう確信すると、ジャンは自ら背中を床に叩きつけて倒れた。

と同時に右手に握ったナイフの角度を調整し、玉に沿って上部に弾いたのだ。


玉は後方の部屋の壁と天井に向かって伸び、爆音を発して爆発した。

部屋全体が軽い地震に見舞われたように揺れ、岩石でできた壁と天井が一部崩れた。

砕かれた部屋の一部がパラパラと土煙とともに辺りに舞う。


ローグはその光景を息を呑んで見ていた。

まさかナイフ一本であれを逸らすなんて。

そして、そんな芸当をやらかした敵を見据えた。

おもしれぇ。

今まで手強いモンスターなどは幾度となく相手をしてきたが、こんな人間は初めてだ。

ジルを傷つけたこと、絶対に後悔させてやる。

ローグは歯を食いしばると、ロングソードを抜いて、敵に向かって地を蹴った。