Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

「どうしてこんなことが出来るの?
攫った人たちをどうしたの?!」

ジルはニックに向かって叫んだ。

そんなジルを見て、ニックはふっと鼻で嘲笑った。

「君は兄さんを庇って、そして攫われた人を心配してここに来たんだろうな。
正直、正しいことをしているつもりなんだろうけど、そんな綺麗事で世の中は渡っていけやしないんだよ」

「綺麗事なんて…。私は傷つけ合ってほしくないだけよ。
攫われた人たちだって、家族が心配してる」

「だから助けたいって?
それが綺麗事だと言ってるんだよ!
何も知らないくせに偽善者ぶるなっ!」

ニックは叫ぶと間合いを詰めてきた。

懐から素早くナイフを取り出すと、ジルに向かって切りかかる。

避けられない。
避ければ後ろにいるロイに攻撃が当たってしまう。

ジルも腰のダガーを抜くと真っ向からそのナイフを受け止めた。

金属のぶつかる激しい音が響き、ジルはその力の強さに押された。