Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

一回、二回、三回と回転の力を加えて蹴りを放つ。

一発目と二発目は腹部に、そして三発目は顎に見事に命中し、宙で蹴りを受けたジャンは更に飛ばされて部屋の壁へと叩きつけられた。

「ぐっ…」

ダメージに苦痛するジャンの呻き声が、着地したジルの耳元にも届く。

少しやりすぎただろうか。
そんな思いが脳裏を掠めるが、今は気にしていられない。


ジルは大きく肩で息をするも、ニックに打たれて反撃もしていないロイの元へと駆け寄った。

ニックをロイから引き剥がし、ロイを庇うようにしてニックと対峙する。

ジルがニックを睨みあげると、ニックも負けず劣らずジルを睨み返した。

「大丈夫?」

ジルはニックから目線を外さずに、後ろに庇ったロイに言った。

「あぁ。すまない」

そう答えるロイの声は痛々しい。
もう既に立ち上がるのも苦しそうなほどだ。


しばらくジルたちとニックたち盗賊との睨み合いが続いた。

この部屋にいる盗賊は、ニックとジャン、そして他二人。

部屋の外にいる盗賊たちにはまだ気づかれていないが、直に騒ぎを聞きつけてやってくるだろう。

そうなってはジルたちに勝ち目はない。