Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

今、手にしているのは湾曲刀ではないにしろ、ナイフが彼の手によって細やかに踊っている。

武術家のジルに対して足止めをしようとしているジャンは、体術にもよほど自信があると言えるだろう。


瞬時にジルとの距離を縮め、動きを封じるように攻撃を繰り出してくる。

ジルはそれを受け止めながら躱すと、自らも攻撃を繰り出した。

何度目かの攻防の後、上から迫ったジャンの腕がジルの後頭部を押さえ込んだ。

くの字に曲がったジルの身体。
その鳩尾にジャンの膝蹴りが襲いかかる。

ジルはそれを両手で防御して最低限のダメージに抑えると、ジャンの襟足に手を伸ばした。

首元の髪の生え際、その髪を掴むと短いジャンの悲鳴が聞こえた。

ジャンの身体の下に潜り込んだまま、彼の足を引っ掛けて体勢を崩させる。

ジルはそのままの勢いで、背負い投げの要領でジャンを空中へと投げ飛ばした。


だが、それだけでジャンが怯むはずがない。
すぐに立て直して、また邪魔に入ってくるに決まっている。

そう判断すると、ジルは地を蹴って、空中に飛ばされるジャンへと向けて跳躍した。