Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

目の前て起こっている一方的な殴り合いを、ジルは歯痒さを感じながら見ているしかなかった。

このままでは、ロイの命が危ない。

殴り殺されてしまうのを、じっとしながら見ているしかないのか。

「あなた、平気なの?」

ジルは背後にいるジャンに向かって言った。

声に反応したジャン。
無言で突きつけるナイフを近づける。

黙っていろ。
そう態度が示している。

が、黙っているわけにはいかない。

「こんなのやめさせて」

「………」

「あなたは、ロイを恨んでなんかいない。
そうじょなかったら、ミシェルをロイに託したりなんかしないわ」

「……黙って」

ナイフを握るてに力がこもる。

だが、ジルは怯まなかった。

「兄弟でこんなこと…。
あなたの恋人だったカレンさんだって、こんなこと喜ぶはずがないじゃない」

「うるさい。黙れっ」

いっそうナイフが突きつけられた。

だが、そこにジャンの隙が生まれた。

ナイフを持つ手が小刻みに震える。

ジルの言葉に動揺し、激昂したことにより生じた隙だった。