Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

突然の攻撃にジルは思わず息を呑んだ。

だが、倒れたロイを助け起こそうと動きかけたとき、ジルはただならぬ殺気を感じた。

「おっと。動かないでください」

いつの間にかジルの背後を取った人物が、ジルの首元にナイフを突きつけ耳もので囁く。

ジャンだった。

動けば喉を掻っ切られるだろう。

ジルは額から汗が滴るのを感じながら大人しくするしかなかった。

見るとローグも同じように二人の盗賊に動きを封じられている。


その光景を一瞥したニック。

ゆっくりと倒れたロイに近づくと、胸倉を掴みロイを立ち上がらせた。

ロイは痛みで顔をしかめながらも、その手を払いのけた。


「飛んで火に入る夏の虫…、だよ。兄さん」

ニックは払われたてを見つめていたが、ポツリとそう呟いた。

「なに？」

「兄さんには僕を止められない。
大人しくしていれば僕も兄さんに危害を加えようとは思ってなかった。
けど、邪魔をするならそうはいかないよ。
僕たちは僕たちのやり方で生きていくんだ」

「へっ…。
お前、なに言ってるか意味が分からねぇよ。
カレンの仇なら俺を狙えよ。
だが、今お前がやっていることは、単なる不良のカツアゲと同じじゃねぇか。
そんなんでカレンの墓の前に立てるのかよ」

「うるさいっ！！」

ニックの拳の連打がロイに襲いかかる。

ロイはサンドバックのように滅多打ちにされていった。

時々反撃を繰り出すも、その手はニックに届かない。

どう見てもニックが優勢だった。