尤も、旅中はミシェルが思い描くような楽しい活劇のあるものばかりではない。
時には過酷で、精神的にも肉体的にも限界を迫られることもある。
妄想を描いている彼女は、まだそれを知らない。
ジルは困った。
途中まで自分が一緒にいるとはいえ、危険な目に遭うかもしれない。
また、グランドヒールまで行ったところで別れることになり、リィズ村への帰りは彼女一人になってしまう。
そんな危険なことはさせられない。
ジルはそう言って断った。
だが、ミシェルは意外にもキョトンとした顔で返答した。
「大丈夫よ。ダレンも一緒なんだから」
「え? ダレンも?」
ミシェルの言葉を繰り返しながら、ダレンの顔を頭に描く。
浅黒い肌とワイルドな髭を生やした男で、村では<何でも屋>なるものを営んでいる。
ジルたちも馴染みの客だ。
歳は30歳くらいに思うが、正直本当のところは分からない。
「当たり前じゃない。私一人であんな荷物、運べる訳ないし。
殆どはダレンの仕事みたいなもんなんだから」
ミシェルはそう言ってコロコロと笑った。
そういう訳だから、帰りのことは何も心配いらない。
例え片道だけでもジルと一緒に行動したいのだと。
結局、そのあと数十分、ミシェルに強く懇願され、ジルは仕方なくグランドヒールまで一緒に行くことを承諾した。
ジルもまた、一人旅にどこか寂しさを感じていたのかもしれない。
彼女たちと別れれば、一人の時間はとても長いものになるだろう。
そう感じた。

